1464.小説『私は忘れない』
表題の小説『私は忘れない』についてですが、事前の予習をしている時に、有吉佐和子が黒島を舞台にした朝日新聞の連載小説を書いていたのを知りました。
地元の浜松浜北の街の大きな書店のいくつかを廻るも、その作品はなく絶版となっており、その後、浜北の図書館に在庫があり、この文庫版を借りて旅行中に読むことにしました。
有吉佐和子といえば、『恍惚の人』『複合汚染』などで知られる社会派小説家です。彼女の出自に関わる『紀ノ川』『華岡青洲の妻』でも知られています。53歳で病没しており、せめて後20年くらい存命ならば、どれだけ素晴らしいさらなる作品を世に出していたことか、早死にを惜しむばかりです。
本作は、そんな彼女の20代の作品でしたが、連載された昭和34年は今から60余年も前のことで、日本の世の中では高度経済成長のもと、冷蔵庫・洗濯機・白黒テレビが三種の神器と呼ばれていた時代でしたが、舞台である黒島では、電気は日没後から3時間ほどだけつき、電話はまだなく、四日に一度やってくる鹿児島からの連絡船は、海が荒れれば欠航となり、欠航が続けばコメなどの生活物資はたちまち不足してしまうという、厳しい環境の島でした。
そんな中を小中学校の教員たちが、辺地教育の向上を目指して孤軍奮闘をしていく物語ですが、片泊集落と大里集落の伝統的な対立関係があり、私は本を読み始めた際に、例の黒島問題を頭に抱えていたこともあり、途中までで読み進めなくなってしまいました。
なんとか読了したのが黒島訪問を前に宿泊した硫黄島の夜で、この時には岐阜のK氏の出現により黒島問題は解決しており、心が晴れ晴れとしていたために、読み終えることができました。この物語は私がまだ幼児の頃の話で、黒島においても現世の話ではないことが理解できたからです。
有吉佐和子が鹿児島には縁もゆかりもない作家ですが、何ゆえに大隅諸島の小さな島・黒島を注目したのか?この辺のことも定かではありません。
物語の最初の方に、主人公がモデルとして撮影している休憩時に『忘れられた島』として、三島村の写真を目にしたことによって、後日休暇をとって訪問したなどど書かれてはいるのですが、この『忘れられた島』の写真集のアンサーとして『私は忘れない』という小説名にしたのかもしれません。
今度は『恍惚の人』を読んでみようかと思います。
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